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★どですかでん

 昭和45年の黒澤監督作品に「どですかでん」という作品がある。「思う色が出せない」と言う理由でずっとモノクロ作品にこだわっていた、画家志望だった黒澤監督が初めて撮ったカラー作品。

 山本周五郎原作のこの作品は、いろんなものを背負いつつもたくましく生きている、ある貧民街に住む人々の物語だ。この中で伴淳三郎演じる島さんというサラリーマンが出てくる。ある時、島さんが同僚を家に招くのだが、あまりに横柄な島さんのカミさんの態度にそのカミさんが(お客様をほっといて)フロに出ている間に「なんだあの奥さんの態度は!」と島さんに悪態をつく。「まあまあ、スマン」と柔らかく謝り続ける島さんだったが、その同僚がさらにカミさんの悪口を言い続け、終いには「追い出してしまえ」とまで言った時。温厚だった島さんは豹変して同僚を押さえつけ怒るのだ。「貧乏な時に一緒に耐えてくれた僕のワイフの何が君に分るのだ!それを追い出せとは何事だ」と。

 島さんのワイフに対する想い、他人には決して伺い知れない夫婦の繋がりの貴さが感じられるこのシーンではいつもホロリとさせられる。寺内貫太郎一家での岩さんや、内田吐夢監督「飢餓海峡」の老刑事も良かったが、私にとって伴淳三郎ならこの島さんに尽きる。

 この作品は好きな黒澤作品を挙げろ、と言われたら「七人の侍」の次に挙げるくらい好きな作品。武満徹の音楽も素晴らしい。90年のアカデミー特別賞授賞式の黒澤作品紹介フィルムで一部分を初めて目にし、92年東宝からソフト化されるまでは海外版ビデオでしか観ることが出来なかったこの作品は、今でも大事に大事に観たくなる作品。毎年年末には夜にゆっくりと観ることにしているので今日はこんな感じ。

どで2

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